【初心者向け】量子コンピュータのできること・できないこと

量子コンピュータの特徴について、こんな風に思っていませんか?

量子コンピュータは重ね合わせを利用して従来のコンピュータよりもずっと高速に計算が可能だから、将来あらゆる従来コンピュータが量子コンピュータに置き換わる!

残念ですが、半分正しくて半分間違いです。
確かに量子コンピュータは特定の問題は高速に解くことが出来ますが、この計算能力は全ての問題には適用できません。

そもそも量子コンピュータのできること・できないことって一体何でしょうか?
出来ることは非常によく取り上げられる一方で、できないことってあまり聞かないですよね。

この記事では量子コンピュータ初心者の方に向けて、量子コンピュータは何ができて、何ができないのかについて紹介します。

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量子コンピュータのできること

まず古典コンピュータ(従来のコンピュータ)と比較して、量子コンピュータは以下のことができます。

量子コンピュータのできること
  • 一度の演算で複数の組み合わせを計算する
  • 特定の問題に対して劇的に計算量を減らす

一度の演算で複数の組み合わせを計算する

量子コンピュータと古典コンピュータの最大の違いは、少ない量子ビット数で多くの組み合わせを並行して計算可能である点です。

量子コンピュータは量子の重ね合わせを利用することで、$n$ビットの量子ビットに対して$2^n$通りの情報を表現することが出来ます。

そのため1回の演算で計算可能な組み合わせが量子ビットに対して指数関数的に増やすことが可能となります。

量子の重ね合わせを利用した並列計算についてはこちらの記事で紹介しているので、量子の重ね合わせについて不安がある方は併せてご覧ください!

特定の問題に対して劇的に計算量を減らす

量子コンピュータは重ね合わせを利用した並列計算によって、特定の問題を非常に高速に解くことができると期待されています。

特に現在効果が大きく期待されているのは次の3領域です。
共通して膨大なパターンに対する計算を必要とする領域と言えます。

量子コンピュータの活用が期待される3領域
  • シミュレーション
  • 最適化
  • AI(機械学習)

現状は計算可能な範囲の問題に限って古典コンピュータが利用されていますが、少し複雑な問題になると計算時間がとても多くなり、現実的な時間内に解けなくて諦めてしまっている状況です。

量子コンピュータは現実的な時間内に解を求め、様々なビジネスチャンスにつなげることを可能にすると考えられています。

ただし、「特定の問題」と書いたように量子コンピュータの計算能力は全ての問題に対して適用できるわけではありません。なぜなら以下の量子コンピュータができないことが量子計算の適用範囲を制限してしまうからです。

量子コンピュータのできないこと

量子コンピュータのできないことについても知らないと大きな誤解の元となってしまうため、できることと同じくらい知っておくことは大切です。

量子コンピュータのできないことは以下のとおりです。

量子コンピュータのできないこと
  • あらゆる計算を高速に解くことが出来る
  • 演算に対して常に正しい結果を取得する

あらゆる計算を高速に解くことが出来る

量子コンピュータは多数の組み合わせを並列で計算することで、計算の高速化が可能ですが、全ての問題に適用できるわけではありません。

というのも、並列で計算された全ての結果を取り出すことが出来ないからです。

結果を全て取り出せない

量子ビットは状態を読み出そうとすると、例え重ね合わせの状態でも確率的に1つの状態に確定していしまい、確定する前の状態の情報が失われるという性質を持っています。

つまり、大量の組み合わせを並列に計算することが可能でも、取り出せる結果は1つのみという厳しい制約があるのです。

その結果、量子コンピュータが効果的に適用できるのは、演算結果の読み取り時の制約を前提として計算方法(アルゴリズム)を工夫できる問題に限られてしまうのです。

どのような問題に対して効果的に量子計算が適用可能か、またどんな計算の工夫が必要かについては日々研究が進められています。

演算に対して常に正しい結果を取得する

量子コンピュータの演算結果は量子状態の読み出し時に確率的に変化します。
つまり、演算結果は確率的に値が変わりうるということを前提に使用することが必要となります。

量子コンピュータのタスクの向き不向き

そのため膨大なパターンから確率的に良さそうな答えを取り出すというタスクには非常に効果的ですが、確実に正しい答えを求められるようなタスクはこなすことが出来ません。

問題の性質からも量子コンピュータにとって向き不向きがあるため、何でもかんでも量子コンピュータで置き換えが可能というわけではないのです。

まとめ

この記事では量子コンピュータのできること・できないことについて紹介しました。

一部の側面だけを見ると量子コンピュータは古典コンピュータに置き換わる夢のマシンというように捉えられがちですが、できること・できないことを理解すると誤解だと理解いただけると思います。

量子コンピュータは将来非常に大きなインパクトをもたらすと期待されていますが、一方で現状では多くの制約があるということは知っておきましょう!

じゃあどんな場面に量子コンピュータが使えるのかについてはこちらの記事で紹介しています。

これを期に量子コンピュータについて正しい理解を持ちたいという方はぜひこちらの本を一冊読んでみてください!量子コンピュータについて平易な解説をしているおすすめの一冊です!

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