今回は「スターバックス再生物語 つながりを育む経営」という本を紹介します。
著者は今や世界一のコーヒーショップであるスターバックスを成長させた元CEOのハワード・シュルツさんです。2020年のアメリカ大統領選挙への出馬検討で話題となった方でもあります。
スターバックスが再生?
まず私が最初この本のタイトルを見た時にふとこんな疑問を持ちました。

あれ、スターバックスって悪い時期なんてあったのか?
私と同年代の20代前半の人も同様の感覚ではないでしょうか。私たちは大人気のスターバックスコーヒーしか目にしたことがありません。
では「再生」の時期がいつの話かと言うと株価を見るとよくわかりました。

こちらは1992年から現在(2020年)までの株価を表しています。現在でこそ株価は100ドルに迫る勢い(現在の下落は新型コロナウイルスによる影響)ですが、昔を遡ると2007年から2009年にかけてそれまで20ドル近かった株価が4.7ドルと約5分の1にまで下落した時期がありました。
そうです。ちょうどリーマンショックの時期です。
しかしスターバックスの株価が大きく下落したのは単に不景気・金融危機だったからというだけではありませんでした。シュルツさんは当時のスターバックスは魂を失っていたと記しています。
過去一〇年間、成長と拡大と発展を実現して、一〇〇〇軒に満たなかった店舗を一万三〇〇〇軒へと増やす過程で、わたしたちは多くの決定を降してきた。しかし、それらはいま思えば、スターバックス体験の質を低下させ、ブランドをコモディティ化してしまった。
当時のスターバックスは利益を追求するあまり店舗拡大を急ぎ、結果としてサービスの品質や店舗やパートナー(社員、店員さん)の雰囲気を低下させてしまっていたのです。お客様の信頼を失い始めたスターバックスの経営は危機に晒されたのです。
決して変わることのない使命
不景気の中一刻も早い業務改善が求められる状況でシュルツさんは全店舗終日休業してパートナーを再研修し、失ったスターバックスの使命(ミッション)を取り戻すという非常に大胆な行動に出たのです。
全店舗休業して再研修など自分たちの過ちを認めるようなもので、投資家や銀行の心はどんどん離れていく一方でした。しかし目先の株価を捨ててまでもシュルツさんはスターバックスの使命を守りたかったのです。

スターバックスの使命とは商品の提供にとどまらず『体験』を提供すること。公共性と個人性を併せ持ち、他の誰かとつながり、自分自身を再発見する場を提供することです。
現在のスターバックスの様子はどうでしょうか。連日多くの人が来店していますね。
コーヒーを楽しむおじさん、おしゃべりに花を咲かせている女子高生、勉強に精を出す大学生、打ち合わせをしているビジネスマン…様々な人がそれぞれの目的で来店しています。
私たちがそういった場にスターバックスを選んでいるのは、スターバックスが掲げたミッションが現在も変わらず実現されているからなのでしょうね。
使命を実現するのは最後は一人一人
この本を読んで企業が掲げている使命とは創業の魂であり、時代を超えても決して変わることのないものであると痛感しました。
どんなに業績がよくても掲げた使命を実現できない企業に価値はない。
そしてこうした使命を実現するのは社員一人一人です。
私たちはどんな立場であれ企業の事業に関わる以上、自社のミッションの魂をしっかりと受け取らなければなりません。企業が成功するかしないかは最後はそこで働く私たち一人一人の行動なのです。
と同時にこの本からは企業の心構えだけでなく、個人の生き方に対して決して「自分らしさ」を失うなというメッセージが込められているように感じました。
スターバックスが世間の一時的な評価を犠牲にしても豊かな体験の追求を諦めなかったように、私たちも目先の評価にとらわれず自分らしさを追い求める大切さを教えてくれるそんな一冊です。
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